2006年05月09日 - Google Earthの画像はリスクを抱えるのか

 Google Earthをご存知だろうか?これはGoogleが提供するサービスで、衛星より撮影した画像をネット上で公開するものだ。

米Googleは6月28日、世界の衛星画像などを表示できるソフト「Google Earth」英語版を公開した。「Google Maps」とは異なり、Windows PCにインストールする単体ソフトとしてダウンロード提供し、さらに地図データをネットを介してストリーミング取得しながら表示する仕組みだ。無料版と有料版を選択できる。
有料版のGoogle Earth Plus(年間20ドル)は、GPSデバイスとの連携に対応するほか、データの表計算ソフトへのインポート、地図上への記入ツール、高解像度印刷などの機能を持つ。また商用利用向けの「Google Earth Pro(年間400ドル)はGIS(地理情報システム)データとの連携なども可能だ。
 「Google Earth」で地球を僕の手の上に(ITmedia)


 Google Earhtについては面白い議論がある。各国の軍事施設が公開されるのは安全保障上問題があり、また施設が表示されている画像より座標(東経何度・西経何度など)を取得できるのは、GPS誘導ミサイルをテロリストが入手した場合に大変難儀なのではとの議論だ。
 Wikipediaでは、米国の機密性が高い施設についてはモザイク処理されていると記述されているのだから、恐らくGoogleは様々な治安上のリスクを認知しているのは明らかだ。

アメリカの治安機密に触れる場所については、モザイクがかけられている(例:ホワイトハウス近辺、ペンタゴン)。
問題点
各国の秘密事項である軍施設・政府施設・原発などの、本来秘匿すべき重要施設の衛星写真なども容易に見ることができる。テロリストがこのことを利用し、これらの重要施設が攻撃される可能性があるとして、インド・タイ・オランダ・韓国などが非難を行った。なお、アメリカ・ホワイトハウス、ペンタゴンなど、一部の重要施設にはモザイク処理がかけられている。また、イスラエルの高解像度画像については法的に公表が差し控えられている。
 Google Earth(Wikipedia)

 もちろん米国に限らず他の国家にしても、自国の重要施設が曝け出され安全保障上の問題に直面するのを警戒するだろう。

タイは、インターネットで入手できる詳細な衛星写真が同国の国家安全を脅かすことを恐れ、Googleに対し、攻撃に無防備な政府の重要な建物の画像を表示しないよう要請するもよう。
タイの軍部は、政府の通信・セキュリティ機関とこの問題について話し合った後、Googleおよび同種のサービスを提供している企業にアプローチすると、タイ国防軍の広報担当、ウィーラサック・マニーイン少将は述べた。
「われわれは、特に政府の建造物の詳細な画像に制限が可能かどうか模索している。観光名所の画像は問題ないと考えている」とウィーラサック氏はロイターに語った。
 Google Earth、タイ軍部を怒らす(ITmedia)(http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0509/07/news071.html


 さて、ITpro Securityにて、風変わりな記事が転載されていた。

 「セキュリティ専門家」とは何者なのか,疑問に思うことがある。ここに,「『Google Earth』を使うとサッカー場のGPS座標を読み取れることから,テロのリスクが存在する」と考える専門家がいる。
 要するにKlaus Dieter Matschke氏は,これまでGoogle Earthに1kmの誤差があったのに,現在20m以下の精度でビルの位置を特定可能になったため,不安を感じているのだ。同氏は「この情報から,テロリストはミサイル攻撃に使う正確な位置を取得できる」と心配している。
 こんな「たわごと」をメディアで発表する人物が出るとは思いもしなかった。GPS端末をポケットに忍ばせてサッカー場まで試合を見に行き,1mの精度でGPS座標を得ることなど,誰でも自由に行える。地図を買ってもよい。
 Google Earthには問題などない。真の問題は,短距離ミサイルがブラック・マーケットで入手できることだ。
Copyright (c) 2006 by Bruce Schneier.
◆この記事は,Bruce Schneier氏の許可を得て,同氏が執筆および発行するフリーのニュース・レター「CRYPTO-GRAM」の記事を抜粋して日本語化したものです。
◆Bruce Schneier氏は米Counterpane Internet Securityの創業者およびCTO(最高技術責任者)です。Counterpane Internet Securityはセキュリティ監視の専業ベンダーであり,国内ではインテックと提携し,監視サービス「EINS/MSS+」を提供しています。
 【CRYPTO-GRAM日本語版】「Google Earth」によるテロのリスク(ITpro Security)


 Bruce Schneier氏を何故にITpro Securityがここまで諸手を上げて持ち上げるのか、自分はわからないんだが。
 氏の肩書きはセキュリティ監視専業ベンダーの創業者およびCTO(最高技術責任者)なのだから、彼は「セキュリティ専門家」なのだろう。その「専門家」が他の「専門家」を名指しで非難した記事を転載した、しかしそれが微妙。そんな感じのITproの記事だ。

 Bruce Schneier氏はあまりにもイマジネーションが欠如しているのではないだろうか。
 またLucaさんが酒を飲みつつ思いつくようなレベルの(安全保障上での)問題 - これらは多くのネット上でのニュース・または個人のブログで取り扱われている - がすっぽ抜けた記事を、ITproが掲載した理由が全くわからない。編集の段階でリジェクトされるか・もしくはもっとマトモな記事を転載したいと申し入れても不思議は無いだろう。
 大体「サッカー場のGPS座標」なんて、論点そのものがおかしい。GPS端末を所持したテロリストがわざわざサッカー場に行く、ですか。もしくは地図を買えば良いだけだ、と。
 Google Earthによりテロリストは、攻撃ターゲット周辺の地形、付近の建造物(それが高層ビルであったならばなおのこと)を容易に判別できるだろう。ビルや何かのアンテナなどの障害物に囲まれているターゲットを、地図のみで判別するのは難しい。自律的に障害物を避けるミサイルであったとしても、計画が失敗する可能性は最低限のものとしたいだろう。だからこそGoogle Earthは(テロリスト的に)有用なのだ。
 またわざわざ現地の座標を取得する目的でテロリストがメンバーを派遣するのは、どうなんだろうか。ならば現地に爆弾でも仕掛けた方が手っ取りはやい。

 では何故にわざわざGoogleは、ホワイトハウスの画像にモザイクを?それはGoogleが、安全保障上でのリスクが存在するのを認めているからだ。
 君が購入した国土地理院の1/25000地図には(見ればわかる事だが)自衛隊の全ての施設・建物が掲載されているのではない。場合によっては数十・数百ヘクタール(1haは100m*100m)の敷地が全て白塗りである。
 もちろんGoogleが世界各国政府の要望に答え、事前にモザイク処理を施すべき画像を適切に処理できるのかと言えば、それは難しいだろう、多くのリスクを抱えるにも関わらず。だからこそ事後ではあるが、これに抗議する国家が存在するのだ。

 「そんな衛星写真はどこでも購入できるし、今更Google Earthが公開したとしてもどうでも良い」ですか?繰り返しになりますが、では何故に米国の一部ではモザイク処理が施されているのでしょうか。


誰でも入手できる衛星画像と航空写真、だが足がつく(2006年2月14日追記事項)


 うっかり書き忘れていた点があったので、追記する。
 衛星から撮影した画像や、航空機より撮影した空中写真を提供する企業は幾つかあるものだ。
 だが購入時には当然ながら幾つかの手続きを踏まなければならない。

 軍事的な拠点(基地など)を撮影した画像を入手するには、企業よりの通報リスクがある。
 「何故かミサイル基地の画像ばかりを集める不審な顧客が居ます!」と。
 だから画像をGoogle Earth以外の一般的な手段にて入手するならば、シークレットサービスとか何かに事前に察知される可能性もある。
 その点ではGoogle Earthの利用は匿名性が高い手段であるので、ある種の人らにとっては有用なのだ。

 では正反対の話を一つ。
 Google Earthを利用して罠をかけられないものだろうかと。
 著名な場所であれば文字列を入力して表示できる。
 特定の場所 - それこそテロリストが襲撃しそうな施設 - を表示するようなユーザーを記録し、閲覧者の情報を漏らされたりするのはアリなのかな。

Google Earthがプライバシーを侵害する日


 衛星写真の解像度は様々であるが、自分の知人が利用しているのは解像度3mであり、せいぜい大雑把な国道や土地利用区分が判別できる程度であるが。
 これが軍事衛星が利用できるような高解像度画像であったらばどうだろう?解像度10cmクラス、それこそ敵の戦車のキャタピラがどのような仕様であるのか判別し針路を判別したり、また余計な事だが敵兵の食事まで判別できるようなものだ。

 Google Earthの高解像度画像が世界規模となり、更新頻度が今後より短いスパン、例えば数日程度になったとしたらばどうだろう?

 君が乗る車の車種を判別され、フロントのアクセサリーやクレーンゲームで得た人形まで判別できるとする。これでは「あの日は自宅に居た、いや、峠のドライブインでコーヒーを飲んでいた」などのアリバイが、簡単に崩れるのではなかろうか。
 プール付きの豪邸に住まう方は、嫉妬深い恋人より、庭のプールサイドに水着ギャルがたわむれている衛星写真を見られないよう注意しなければならない。
 公園で誰かとイチャつくカップルは、近くに停車した車のナンバープレートを取得されないよう注意を払わなければならない。面白半分にナンバーより身元調査され、持ち主を脅迫するビジネスが誕生するやもしれないからだ。


この記事へのコメント
> Google Earthの高解像度画像が世界規模となり、
> 更新頻度が今後より短いスパン、例えば数日程度に
> なったとしたらばどうだろう?

webarchive.org みたいな、 eartharchive.org が発足して…

Posted by itochan at 2006年05月14日 12:08
今になって思いついたんですが。
どこかの軍事施設などの座標を取得したユーザーが居たらば、それを記録しまくり、通報とか。
Posted by Luca at 2006年05月21日 07:09