2005年12月15日 - 無料アンチウイルスソフトに関するレポート結果の恣意的誘導
レポートや統計調査の数字を読み解くテクニック
よく雑誌やテレビでの読者アンケートや街灯アンケートの結果、また調査会社によるレポートなどを、その背景まで考えずにうわべのみを眺めまともに信じ込ませる試みがあるんだけど。
そしてその結果をじっくりと検討もせずに転載するような、大手企業のニュースポータル(Japan Internet Com、Yahoo!Japanやその他)も存在したりして。
昨日のJapan.internet.comによるアンチウイルスソフトに関する記事に、あまりにも妙な部分があり引っかかっていたんだけど。これをそのまま転載・紹介し、何ーにも考えない企業を複数発見した。こちらはただ「うーむ」、などと唸っているのです。
これらは契約している企業のネタをただそのまま転載しているだけなのやもしれないんだけど。相応の大企業なんだから、編集部内部で相応のチェックを経ているはずなんだけどな。
元ネタはウイルス対策ソフト、有償でも無償でも効果は同じ!? (Japan.internet.com デイリーリサーチ)なんですが。以下この内容を引用し、話を進める。
母集団よりのサンプリングの段階で恣意的な予感が
統計学については、自分は仕事の上で年度末によく頭を悩まされるんですが。正直な独白としてそれほどの知見は無いし、ここでマーケティング論まで含め一席ぶつのは無理があって。自分の知見が及ぶ範疇で説明する。
まずこの記事中での調査は、アンケートの対象を抽出する段階で明らかにおかしいのだよ。この記事がどのような層に対してアンケート調査を行ったのか、それからまずはじっくりと眺めてみよう。
2005/12/13 20代〜60代の、現在自宅の PC で無償のウイルス対策ソフトをインストールして使用している、全国インターネットユーザー300人。
全体300人のうち、過去に有償のウイルス対策ソフトを使った経験のあるユーザーは66.0%(198人)。
さて、この段階で何がどうおかしいのか気付かなかったならば、君の日頃の情報解析力はヤバイですよ。
(ムッと腹を立てず、まぁじっくりと最期まで読んで下さいな)
まずアンチウイルスソフトは、(1つのパソコンにて)複数の製品を導入し運用すれば、OSが起動しなくなったり、また頻繁にフリーズするなどの不具合が生じるものである。某アンチウイルスソフトはインストール時に他社製品がインストールされている(もしくはその残骸が確認)ならば、わざわざ警告を表示するほどなのだな。
だからユーザーは「1つの」アンチウイルスソフトのみを導入しているだろう、大抵の場合。
例外として常駐型・非常駐型を併用したり、またアンチウイルスソフトとその他のスパイウェア対策ソフトなどを併用している方も、存在はするとは思われるんだけど。そのようなパソコンにて製品間での競合による不具合が生じるのかどうかは、この際は関係が無い話なので放置する。
まずこのようなアンケート調査を行う場合、何百・何千万ものユーザーにアンケートを行うのは、費用や労力の面で無理がある。そこで「母集団」より何パーセントかの割合で、「一部」のユーザーを抽出し調査を行う(サンプリング、抽出)。
母集団をどのような層とするのか、それは一瞬悩むのだが。まぁこんな感じになる。
- パソコンを利用している全ての人々
- アンチウイルスソフトを利用した経験がある、全ての人々
- 今回の記事に掲載されたような、「無料アンチウイルスソフトを利用しているユーザー層」
- 特定の製品を利用しているユーザー
上から下へと順繰りと、母集団が小さく・そして期待できる回答が偏向していくのは理解できると思われますが。
(母集団=実際のユーザーの数)
調査の結果に偏りが生じないようにするためにサンプルサイズを大きくしたとしても、サンプリングの段階で抽出する母集団が既に偏った層であるならば、その調査結果は普遍的なものではなく「特定の層はこう考える」となる。
(サンプルサイズ=アンケート調査を依頼されるユーザーの数)
蛇足だが、アンケートの手法によりある程度結果を操作するのも可能だ。
面接形式と無記名アンケートでは、「タバコのポイ捨てをどう思いますか」「とある政党を支持しますか」と聞きまくった結果は、随分と変わるだろう。
さて、ここで記事全体を再度眺めてみようか。
この記事は要約してしまえば、以下のような内容となる。
- アンチウイルスソフトは、無償(無料)であっても有料であっても大差無いと感じるユーザーが多い
- 理由は不明だが、参考記事としてキングソフト社の「キングソフトインターネットセキュリティ2006」をわざわざ別格扱いで掲載している
- キングソフトインターネットセキュリティ2006は、最近日本国内に紹介されており、無償提供サービスにて知名度を広げるマーケティングを行っている
言ってもいいですかね?(細木数子口調で)
この記事は結果として、キングソフトインターネットセキュリティ2006、もしくは「無償・無料」ソフトウェアを万歳三唱で薦める目的で書かれた、極めて中立性を欠く御用記事に過ぎないのだ。
それを見抜けなかったならば、このようなソフトウェア関連記事を理解・解釈するだけの能力なりリテラシーの有無とは別次元の問題として、日々日頃眺める新聞や雑誌やその他媒体の記事を毎回鵜呑みとし、時に騙されているのだろう。
もしもこの手の調査を行うとしたらばですね、以下のような層に対してアンケートを行う必要があるのだよ。
- パソコンを利用している全ての人々より無作為抽出
- アンチウイルスソフトを利用した経験がある、全ての人々より無作為抽出
じゃなければ、この記事のような「有料ソフトウェアはダメダメ」とか「無料サービス万歳」な結果が自然と導き出されるのは、誰がどう見たって明らかなのだ。
そしてこの記事中では、さりげなーく(微妙にわざとらしく)特定の製品について言及している。
これってその製品の無償提供サービスを「推奨」する目的で作成された、御用記事に過ぎないのだな。
見方を変えれば、わざわざこのような製品を宣伝する目的で、意図的に歪んだサンプリングによるアンケート調査の結果をまんまレポートし公表したとも言える。
何が言いたいのかわからないって?OK、わかった。
じゃぁ君にも理解できるよう、メチャクチャ噛み砕いてわかりやすく解説しよう。
「ブランドもののバックをクリスマスのプレゼントで期待するか?」そんな女性向けアンケートがあったとしよう。
アンケートに答える方々を、その辺の街中を歩いている女性全てとするのか、またブランド物を扱う店の店内で行うのか。その辺りは調査会社の良心なりを信じるしかないのだが。
それでその得られた結果は「日本国内の全ての女性を代表するのか、またブランド物に嗜好性が高い女性の意見なのか」を操作できるだろう。
そこに「今年のグッチはいい感じ」との、アンケート結果と関連の無い話を付け加えるとする。
さぁ、どうだ!
つまりこの記事は、予め対象とするサンプルを恣意的に選ぶ事により「調査会社が期待できるような結果を得た」のだな。
そして、とどめとして無償提供サービスを行っている某社の宣伝を「妙な形で」後押しした、と。
現状として
アンチウイルスソフトには有料なもの、無償なもの、無償なのだが将来的には有料版を購入するよう促すものなどが存在する。
この場では具体的にどの製品がどうなのかなどは語らないんだが。
無償・無料なものは、有料サービスを宣伝させるための「宣伝」に過ぎないのではなかろうか。有料製品の体験版は機能が制限されているのはよくある話だし。
また無料のアンチウイルスソフトは、件出力が極めて劣るものも存在する(ここでは具体的製品名は述べないが、気になるならばGoogleか何かで検索して自分で調べてもらいたい)。
また一般的な傾向として、無料・無償製品は十分なサポートが期待できない場合もあるだろう。
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Japan.internet.comの記事(Japan.internet.com デイリーリサーチ - ウイルス対策ソフト、有償でも無償でも効果は同じ!?)について、次のような指摘を見かけた。 Semplice:無料アンチウイルスソフトに関するレポート結果の恣意的誘導 無料ウィルス対策ソフトの信頼性はさてお...
無料アンチウイルスソフトに関するレポートとリサーチ・リテラシー【データバックアップメモ - extended -】at 2005年12月16日 00:59
この記事へのコメント
Japan.internet.comがどんな会社なのか(特定の製品と関わりがあるのかどうか)が解らなかったのでウイルス対策掲示板ではその点のツッコミは控えましたが、変な記事ですよね。
> 2005/12/13 20代〜60代の、現在自宅の PC で無償のウイルス対策ソフトをインストールして使用している、全国インターネットユーザー300人。
と言う段階で、書ける記事は「無償のウイルス対策ソフトを使って居る人ななんでそれを使っているのか」にしかなりません。
キャノンのカメラを使っている人に「貴方は何でキャノンのカメラを使っているんですか?」
と聞いて「やっぱりカメラはキャノンだそうです」と結論着けたら「お前バカか!」と言うことになるでしょう。
いや、キャノンはそんなアホなことはしないし、ニコンでも良いのですが。
ちなみにアメリカの統計はスポンサー付きが多いですが、ここまで露骨でアホではありません。
> 2005/12/13 20代〜60代の、現在自宅の PC で無償のウイルス対策ソフトをインストールして使用している、全国インターネットユーザー300人。
と言う段階で、書ける記事は「無償のウイルス対策ソフトを使って居る人ななんでそれを使っているのか」にしかなりません。
キャノンのカメラを使っている人に「貴方は何でキャノンのカメラを使っているんですか?」
と聞いて「やっぱりカメラはキャノンだそうです」と結論着けたら「お前バカか!」と言うことになるでしょう。
いや、キャノンはそんなアホなことはしないし、ニコンでも良いのですが。
ちなみにアメリカの統計はスポンサー付きが多いですが、ここまで露骨でアホではありません。
Posted by GAN
at 2005年12月16日 00:20
>キャノンのカメラを使っている人に
>「貴方は何でキャノンのカメラを使っているんですか?」と聞いて
はい。それと全く同じ事です。
またYahoo!や大手のニュースポータルなどが、このような記事をそのまま転載するのも不思議でした。
十分怪しい内容であるのは即座にわかるはずなのに、何故にチェックできないのだろうかと。
>「貴方は何でキャノンのカメラを使っているんですか?」と聞いて
はい。それと全く同じ事です。
またYahoo!や大手のニュースポータルなどが、このような記事をそのまま転載するのも不思議でした。
十分怪しい内容であるのは即座にわかるはずなのに、何故にチェックできないのだろうかと。
Posted by Luca
at 2005年12月16日 06:52
私も以前はウイルス対策ソフトを導入していない方に、「ないよりはまし」と無償のウイルス対策ソフトを勧めていましたが、最近はそれもなるべく控えています。
予備知識を持たない方がサポートがあまり期待できないフリーソフトに手を出して、使いこなせないでいる状況が多いのに気付いたからです。
実際にサポートもあるはずの有償版ソフトをインストールしていながら、設定や操作が理解できていなくて、メールスキャンやシールドやプロテクトを有効にしていない丸裸状態だったというユーザーも何度か見ましたし。
こういう方にはフリーソフトは勧められないだけでなく、同じことを繰り返していたら何度PCをリカバリーしても意味はありませんから、その点も釘を刺したりしますが。
格安のキングソフトが注目を集めたりもしましたが、日本国内のソフトが総じて高価なのもサポート体制を強化せざるを得ないがための結果なんでしょうかね。
予備知識を持たない方がサポートがあまり期待できないフリーソフトに手を出して、使いこなせないでいる状況が多いのに気付いたからです。
実際にサポートもあるはずの有償版ソフトをインストールしていながら、設定や操作が理解できていなくて、メールスキャンやシールドやプロテクトを有効にしていない丸裸状態だったというユーザーも何度か見ましたし。
こういう方にはフリーソフトは勧められないだけでなく、同じことを繰り返していたら何度PCをリカバリーしても意味はありませんから、その点も釘を刺したりしますが。
格安のキングソフトが注目を集めたりもしましたが、日本国内のソフトが総じて高価なのもサポート体制を強化せざるを得ないがための結果なんでしょうかね。
Posted by lesson
at 2005年12月16日 07:32
有償/無償・高い/安い、以前に情報量を重視したい人間として
ver2板に投稿しました。
12/10に東京・池袋で、キングソフトのKIS2006のCD-ROMが
複数捨ててありました。
「無償配布」を行っていた、後の時間帯だった為なのか??
(数カ所で配布したらしいです・この週末も実施予定とか)
記事全部を見たわけではないので、全く気付きませんでしたが
「ソレとの関連」の可能性のご指摘ですね。
色々と勉強になりました。
ver2板に投稿しました。
12/10に東京・池袋で、キングソフトのKIS2006のCD-ROMが
複数捨ててありました。
「無償配布」を行っていた、後の時間帯だった為なのか??
(数カ所で配布したらしいです・この週末も実施予定とか)
記事全部を見たわけではないので、全く気付きませんでしたが
「ソレとの関連」の可能性のご指摘ですね。
色々と勉強になりました。
Posted by anju
at 2005年12月16日 09:45
>lessonさん
デフォルトの設定が「全てのファイル形式」でない製品もよくあるし。
ヒューリスティックスキャンの設定が最高レベルでなかったり。
多少動作が重くなったとしても、ある程度しっかりしたデフォルト設定ならばいいんですがね。
>日本国内のソフトが総じて高価なのも
>サポート体制を強化せざるを得ないがための結果
自分もそう思います。
ただ原価などの判断材料がわからず、何ともいいがたく。
また毎年金銭を支払わなければならないのもどうかと。
大抵のソフトウェアは一度代価を支払えばそのままなのに、アンチウイルスソフトはほぼ毎年支払いを続けなければならないのは、心理的に抵抗感を感じる方も多いのではなかろうかと。
デフォルトの設定が「全てのファイル形式」でない製品もよくあるし。
ヒューリスティックスキャンの設定が最高レベルでなかったり。
多少動作が重くなったとしても、ある程度しっかりしたデフォルト設定ならばいいんですがね。
>日本国内のソフトが総じて高価なのも
>サポート体制を強化せざるを得ないがための結果
自分もそう思います。
ただ原価などの判断材料がわからず、何ともいいがたく。
また毎年金銭を支払わなければならないのもどうかと。
大抵のソフトウェアは一度代価を支払えばそのままなのに、アンチウイルスソフトはほぼ毎年支払いを続けなければならないのは、心理的に抵抗感を感じる方も多いのではなかろうかと。
Posted by Luca
at 2005年12月16日 19:57
>anjuさん
anjuさんのver2での「対応するための情報が必須」との見解は、自分も全く同意です。
アンチウイルスソフトは感染を予防するためのものであって、感染してしまえばその効果は十分には期待できないと考えてはいるものの。
やっぱりそのような際にユーザーが頼れるのは、アンチウイルスソフトメーカーの情報なりサポートしかないものだし。
anjuさんのver2での「対応するための情報が必須」との見解は、自分も全く同意です。
アンチウイルスソフトは感染を予防するためのものであって、感染してしまえばその効果は十分には期待できないと考えてはいるものの。
やっぱりそのような際にユーザーが頼れるのは、アンチウイルスソフトメーカーの情報なりサポートしかないものだし。
Posted by Luca
at 2005年12月16日 19:57